【書評】『仕事は楽しいかね?』(デイル・ドーテン 著、野津智子訳、きこ書房)



こんばんは、Yukinosukeです。

今回は、『仕事は楽しいかね?』(デイル・ドーテン 著、野津智子訳、きこ書房)から、私自身がとても参考になった点をまとめておきたいと思います。

この本の続編(『仕事は楽しいかね?2』)と続々編(『仕事は楽しいかね?≪最終講義≫ 仕事は楽しいかね?』)が出版されていることからも、非常に評価の高い本だったことがわかります。

まず、簡単にこの本の紹介をすると、仕事でも人生でも行き詰まりを感じている「私」が、雪のため閉鎖された空港のロビーでたまたま出会った老人から、一夜限りのビジネスの講義を受けるというもので,この老人こそが大企業のトップもアドバイスを求めるほどの実業家であるという設定です。

ということで、この実業家の老人が話すビジネスの真髄の一部を以下にまとめたいと思います。

◆「遊び感覚でいろいろやって、成り行きを見守る。」
◆「問題は才能のあるなしでもなければ、勤勉かどうかでもない。
 (ほとんどの人は)コイン投げの達人ではない。」
◆「適切な時や完璧な機会なんてものはない。」

それにしてもいろいろな本に登場するバートン・マルキール先生の「ウォール街のランダム・ウォーカー」ですが、この本でも、コイン投げ競争の話が例に取り上げられています。

コイン投げ競争とは、コインの表が出れば勝ち、裏が出れば負けという単純なゲームで、これを仮に参加者1000人で行うというものです。

1回目では500人、2回目では250人、これを7回すると8人にまで減ってしまいます。
通常、7回連続で表を出すことはまずあり得ないので、この絶えず表を出し続けた人は天才や名人、成功者と褒め称えられることになります。

なお、現実社会で成功することはこのような単純な話しではありませんが、才能や努力、勤勉さなどだけで必ずしも成功するわけではなく、大なり小なりコイン投げの要素も入ってくることになります。

実際には、才能や努力、勤勉さにより勝率をコツコツ積み上げたうえで、コイン投げに挑むといったところでしょうか。

そのため、この本ではコイン投げ競争に参加し続けること、それも試行錯誤を繰り返しながら、毎日違ったパターンで参加し続けることがとても大切であると言っており、これを「毎日違った自分になる」と文中で表現しています。

「毎日違った自分になる」というのは、少々難しそうですが、「お試し」でもいいので、いろんなパターン、可能性を常に試し続けることが大切という点はとても共感できますし、ぜひ参考にしたいと思います。

◆「あるべき状態よりもさらに上を目指す。」
◆「もし宇宙が信じられないような素晴らしいアイデアをくれるとして、君はそれにふさわしいか?」
◆「試すことは簡単、変えるのは難しい。」
◆「新しいアイデアは、新しい場所に置かれた古いアイデアである。」
◆「試すことに喜びを見出す。」

本の中ではいくつか成功の具体例が紹介されており、私の好きなコカ・コーラの成功体験の話もありました。

【コカ・コーラの話】
アトランタにある薬屋のジョン・ペンバートンは、いくつもの種類の薬を作っては店頭に並べており、ある日、彼が店の奥に入ると従業員が新作のシロップ状の頭痛薬を水割りで飲んでいるところを発見します。
従業員が特に頭痛があるわけでもなくこのシロップを飲んでいたことに興味をもったペンバートンは、自分でもシロップの水割りを試しに飲んでみたところ、悪くない味であったため、さらにこれをソーダ割にし、「コカ・コーラ」として試しに売り出しました。
これがこんにちのコカ・コーラの始まりです。

ここでのポイントは、ペンバートンはシロップの水割をソーダ割りに改良し、試しに販売しましたが、他の人の場合は、どうかという点です。

多くの場合は、まず店の従業員が店の奥で販売している商品を飲んでいたら、普通は注意するのではないでしょうか。(私も間違いなく注意すると思います。)
さらに、それを改良して販売までするなんて、なかなか考えつかないと思います。
もしかすると販売することで、世間の笑い物になり、他の商品の売り上げが下がるリスクもあるわけですから。

今の我々はその後の大成功を知っているので、当時の遊び心や冒険心はあまり感じませんが、実際にはなかなかできないことだ感じます。

この教訓が教えてくれることは、ペンバートンはたまたま試しに販売したのではなくて、普段からいろいろなことを試す習慣があり、リスクをとって(変化を恐れずに)商品として販売までしたということです。

つまり、まさしく彼にとっては店の奥でシロップを飲んでいた従業員が宇宙からの贈り物だったわけで、それを彼はみごとに活かしたということです。

なお、本ではコカ・コーラの話の他に、3Mやディズニー、リーバイスの話も登場しますので、興味のある方は是非、読んでみると面白いかもしれません。

◆「川沿いに住もうと思うなら、ワニと仲良くなれ。」

「川沿いに住もうと思うなら、ワニと仲良くなれ。」というインドのことわざもこの本で紹介されています。
解釈としては、ワニ(トラブル、問題)を排除(解決)するのではなくて、仲良くなることが重要であるということです。
あまりビジネスには関係なさそうなことわざですが、ビジネスの場合は、問題を解決するのではなく、今ある問題と「仲良くなること」、つまり、問題を自分の中で理解・整理・学習することで、そこから次のビジネスのヒントを得ることができるということです。

例えば、上のワニの例がビジネスの場合なら、ワニと仲良くなった住人は、川沿いに住んだおかげでワニと仲良くなり、ワニ使いとなって、あるいはワニの専門家となって、その後のワニビジネスを展開していったかもしれません。

◆最後に

久しぶりに自己啓発本を読みましたが、とても読み応えのある実用的な内容の本でした。「私の財産告白」同様に定期的に忘れたころに読み返す本としたいと思います。


コメント