ポイント
・関税対象は輸入額の2%以下で、カナダやメキシコ、EUなどは対象外で貿易戦争が起こる可能性は低い。・仮に貿易戦争に発展するような事態になると、米国のGDPを1.7%ポイント低下させ、インフレ率を0.4%ポイント上昇させる可能性がある。
・貿易戦争がおこる可能性は低いが、中国の出方は慎重に見極める必要がある。
・今回の関税により、2018年マーケットの急変動をさらに増大させる可能性がある。
こんにちは、Yukinosukeです。
今回は、トランプ大統領が先月、打ち出した貿易関税について、米国バンガード社のレポートが冷静に分析していましたので、そこから自分なりにポイントをまとめてみたいと思います。
◆関税対象は輸入額の2%以下で、カナダやメキシコ、EUなどは対象外
今回の関税対象は、輸入される鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を課すものですが、現時点では(追加の関税がなければ)輸入額全体の2%程度にしかすぎず、カナダやメキシコ、EUなどは対象外となっており、数字でみると実際のところは、あまりインパクトがあるものではありません。また、米国の関税率は、1930年代以降減少し続けており、直近では平均で3.5%、G20の間では2番目に低い数字となっており、これまで関税を低下させ、自由貿易を推進してきたことなど考えると、このタイミングでこれまでの貿易政策を大胆に変更したとは考え難いです。
・輸入に占める関税率の推移
(出所)米国バンガード社より※図中の点線は1930年に成立した「スムート・ホーリー法」で、当時、2万品以上の輸入品に、記録的な高関税をかけ、他国の報復関税をまねきました。その結果、貿易戦争の引き金となり、米国の輸出品は半減し、世界恐慌をより深刻化させたと言われています。
◆米国のGDPを1.7%ポイント低下させ、インフレ率を0.4%ポイント上昇させる
また、バンガード社のレポートによると、今回の関税では貿易の不均衡は短期的には改善されても、報復関税とマーケットのボラティリティによりすぐに元に戻ることが指摘されています。さらに、仮に貿易戦争に発展するような事態になると、これらの副産物として、貿易活動の低下、物価の上昇により米国のGDPを1.7%ポイント低下させ、インフレ率を0.4%ポイント上昇させる可能性もあり、その結果として、FRBの利上げペースは鈍化することなどが言及されています。
なお、貿易戦争はどの国の利益にもならないことは、誰もが分かっていることなのですが、今回の件をスタートに報復関税がエスカレートし、お互いに引くに引けない最悪の状況となる可能性があることは、忘れてはいけないと思います。
まとめ
今回の関税のインパクトを見ると、今のところ、貿易戦争にまで発展する可能性は低そうですが、貿易メカニズムとはそもそも非常に複雑であるため、ひょんなことから当初、誰も想定もしなかったようなことが結果的に起こる可能性もあります。実際、トランプ大統領も貿易戦争は望んでおらず、次の中間選挙に向けた国内向けのアピール(プロレス)だと誰もが思っていると思いますが、今回の主な関税対象である中国の動きは慎重に見極める必要があると思います。
いずれにしても、今回の関税の件は、2018年のマーケットの変動要因のひとつになることは間違いなさそうですから、投資家の皆さんはリスク管理に十分注意した方がよさそうです。
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