ポイント
- 世界人口は成長ペースが鈍化へ
- 2023年までにインドが中国を抜いて人口世界第1位に
- 中国は2021年をピークに人口減少へ
- アメリカは人口成長ペースが鈍化
本記事では、国連が2年毎に公表している「World Population Prospects 2022」(世界の人口予測/WPP2022)が、この7月に公表されたので、世界人口の今後の動きをざっと見てみたいと思います。
WPPについては、本来は昨年2021年の公表予定だったところ、新型コロナパンデミックのため公表が1年遅れとなっていました。
2017年版については、過去に記事にしています。
本記事のデータソースは、すべて国連の「World Population Prospects 2022」を基にグラフやテーブルにしています。
※グラフやテーブルのビジュアルツールが楽しかったので色々と多めに作ってみました。
◆世界人口の成長率は鈍化へ
2022年現在の世界人口は79億人で、2023年には80億人、2050年に97億人、2100年には103億人に達する見込みとなっています。前々回の2017年版では、2050年に98億人、2100年には112億人との予測でしたから成長ペースが鈍化する結果となっています。
資料によれば中国が人口減少に転じたことや新型コロナパンデミックの影響などが反映されているようです。
また、下図が示すようにこの先、成長率は緩やかに下がり続けることが予想されています。
■世界の人口成長率(1950年〜2100年)
■世界の地域別人口の推移(1950年〜2100年)
地域別に見ると、アフリカの増加が大きく、特にナイジェリアやコンゴなどのサハラ砂漠以南のアフリカ諸国の成長が大きくなっています。
資料によると2050年までの増加部分の50%以上はこれらの地域が占める計算となっています。
◆2023年にはインドが中国を抜いて世界第1位に
1990年と2022年、2050年時点の世界人口の上位10カ国です。■世界の将来人口 国別ランキング推移(上位10位、1990年、2022年、2050年)
詳細は後述しますが、国連のデータによると来年2023年には中国とインドの順位が逆転する予定です。
その他、ナイジェリア、コンゴ、エチオピアなどのアフリカ勢が順位を上げる一方、インドネシアやメキシコ、ロシアなどは順位を下げています。
アメリカについては、2050年頃までは世界第3位をキープしています。
日本は2022年は辛うじて11位なものの、今後はズルズルと順位を下げていきます。
上位10カ国を含む世界の各国の国別将来推計人口をまとめています。
■世界の将来人口(国別)(2022年~2100年)
先ほど触れた中国とインドの人口推移です。
■中国とインドの将来人口(1950年~2100年)
国連のデータによるとすでに中国は2021年(14.25億人)に人口のピークを迎えており、今後は減少に向かうと予想されています。
一方のインドは、人口のピークは2063年(16.96億人)と予想されており、まだまだ人口増の局面が続きます。
2023年にはインドが中国の人口を追い抜き、その後、その差が大きく拡大していくと見込まれています。
現在、飛ぶ鳥を落とす勢いの中国ですが、人口減少に伴う急激な高齢化は避けられず、少子化問題も同じく深刻なため、この先、様々な綻びか現れる可能性があります。
今のところ、2016年に廃止した一人っ子政策などの政策変更の効果はまだほとんど見えていません。
今後、ラディカルな少子化対策を実施する可能性はありますが、高齢化問題が薄れる程の成果が出るには長期的にかなりの期間がかかると思います。
少子化問題が一朝一夕に行かないことは、少子化先進国である日本人なら容易に想像できるのではないでしょうか。
中国からインドへどのようにパワーバランスがシフトしていくのか、この先も目が離せないと思います。
◆アメリカの人口成長も鈍化へ
G7各国に中国とインドを加えた人口推移(2022年=100)です。
■G7各国の人口予測(1950年~2100年/2022年=100)
G7ではカナダが大きく成長し、次にアメリカ、イギリス、フランスと続きます。
2100年に今の人口を維持できているのは、G7ではカナダ、アメリカ、イギリスということになります。
いずれも積極的に移民を受け入れてきた国です。
■アメリカの将来人口(年齢3区分別)(2022年~2100年)
アメリカの人口は、2022年は3.4億人、2030年は3.5億人、2050年は3.8億人、2100年は3.9億人となっています。
前々回2017版では、2030年は3.5億人、2050年は3.9億人、2100年は4.5億人となっていましたから、今回2022年版では2050年以降の成長ペースがやや鈍化したことがわかります。
これらはトランプ政権下での移民規制や新型コロナパンデミックなどを反映した影響だと思われます。
なお、現在のバイデン政権では移民規制は解除の方向となっており、今後は幾分かは成長ペースが戻るのではないでしょうか。
アメリカについては、成長ペースの鈍化や高齢化が気になるものの、他の先進国に比べれば相対的に安定した推移であるため、大きな問題にはなり難いと思っています。
人口推移データのテーブルです。
その他、いくつかの国のデータも参考に作成しています。
■日本の将来人口(年齢3区分別)(2022年~2100年)
日本は、人口オーナス期真っ只中ですね。
■中国の将来人口(年齢3区分別)(2022年~2100年)
中国は人口ボーナス期を終え、人口オーナス期となっています。
■インドの将来人口(年齢3区分別)(2022年~2100年)
インドの人口ボーナス期は2030年〜40年頃まで続きます。
■インドネシアの将来人口(年齢3区分別)(2022年~2100年)
人口ボーナス期真っ只中のインドネシアは、2030年頃まで人口ボーナスが続きます。
◆まとめ
世界の人口は今後も成長していくものの、増加ペースは鈍化すると見込まれています。特に、人口大国であった中国は2021年をピークに人口は減少していき、日本と同様に高齢化社会に入ると予想されています。
その結果、来年2023年には中国の人口はインドに抜かれ、インドが新たに人口世界第1位になります。
インドが世界の中でどの様に存在感を高めて行くのか、今後も目が離せないと思います。
アメリカについては、今回の2022年版で人口成長が緩やかになるとの改定があったものの、これまでから大きな変更はなく、引き続き安定的に推移すると思われます。
将来人口については、多少の誤差はあるものの、株価のようにある日突然大暴落といったことはありませんから、10年後、20年後の未来をかなり正確に予想していると思います。
今後、中国が人口減及び高齢化に苦しみながらもアメリカの覇権に挑戦し続けるのか、或いは、インドが中国にとって代わって新たな世界秩序を生みだしていくのか、ざっと人口推移を見るだけでもいろいろと考えせられるのではないでしょうか。
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■2017年版の世界人口予測の分析記事です。■少子化と高齢化の将来人口ピラミッドへの影響です。