【ALGN】銘柄分析|FY21通期|アライン・テクノロジーはマウスピース矯正のパイオニア|Align Technology Inc の10年後予想株価・予想期待収益率


ポイント

  • アライン・テクノロジー(NASDAQ:ALGN)の2031年の予想株価は、PER上限では16495.0ドル、平均では6277.5ドル、下限で2666.7ドル
  • 2031年の予想期待収益率は、PER上限では38.0%、平均では25.3%、下限で15.0%
  • クリアライナーの競争は激化しているが、まだまだ成長余力あり
  • クリアライナー以外の製品の今後にも注目

こんにちは、ゆきのすけ(@yukinosuke35)です。

本記事では、アライン・テクノロジー(会計年度:2021.1~2021.12)の財務分析、10年後予想株価、期待収益率などを確認します。


◆会社概要

1997年にスタンフォード大MBAの Zia Chishti と Kelsey Wirth の2名により米国カリフォルニアに設立されたクリアライナー(マウスピース)や口腔内3Dデジタルスキャナなどを手掛けるマウスピース型歯科矯正テクノロジー企業です。

主力のインビザラインは全世界でこれまで約1200万人(2021年現在)の患者が利用しています。

その他、口腔内3Dデジタルスキャナーの「iTero」シリーズ、歯科用CAD/CAMソフトウェア「exocad」などの関連デジタルプラットフォームの販売もここのところ急成長しています。

アライン・テクノロジーの資料によれば、世界で毎年2100万件の歯科矯正症例が報告されており、その約90%(1900万件)でインビザラインの適用が可能とのことです。

世界では約5億人が嚙み合わせに何らかの問題があると推計されていますので、インビザラインのマーケットはまだまだこれからということになります。


これまでの主な年表をまとめています。

1997年 米国カリフォルニアに設立

1998年 インビザライン・システム(InvisAlign)がFDAより認可を受ける

1999年 米国にてインビザライン販売開始

2000年 メキシコ(フアレス)にクリアライナー等製造拠点開設

2001年 NASDAQにIPO(公募価格13ドル/株)

2001年 ヨーロッパ(EMEA)にてインビザライン販売開始

2006年 日本にてインビザライン販売開始

2010年 売上高10億ドル達成

2011年 中国で販売開始

2011年 Cadent社(口腔内スキャナの「iTero」)を1.9億ドルで買収

2018年 ヨーロッパ(EMEA)にてインビザライン患者数100万人達成

2018年 中国(資陽)にクリアライナー等製造施設開設

2020年 Exocad社(exocad CAD/CAM)を約4.2億ドルで買収

2020年 アジア(APAC)にてインビザライン患者数100万人達成

2021年 全世界でインビザライン患者数1000万人達成

2022年 ポーランド(Wroclaw)にEMEA向けクリアライナー等製造施設開設予定


主力製品であるインビザラインの出荷数の推移は以下のようになっております。

■インビザライン出荷数の推移


(出所)Align社 QUARTERLY RESULTSより筆者作成

米国発の企業ということもあり、当初は北アメリカでの出荷が主でしたが、ヨーロッパ(EMEA)、アジア(APAC)への展開に伴い、直近では海外部門(インターナショナル(EMEA&APAC))の伸びが顕著で、あと数年すればアメリカ(南米含む)の出荷数を逆転し、今後の柱になると思われます。

直近2021年の出荷数は、アメリカで約140万ケース、海外で約110万ケース、合計250万ケースとなっています。

参考までにライバル企業のひとつであるスマイルダイレクトクラブ(NASDAQ:SDC)について見ると、2021年クリアライナー出荷数は約33万件で、インビザラインの1割強の規模となっています。(SDC IR資料より


次に、会社の事業セグメントです。

■事業セグメント

1.クリアライナー(Clear Aligner)

主力製品のクリアライナー(透明マウスピース)のカテゴリーです。

クリアライナー製品は、治療レベル(治療期間、年齢等)に応じて、インビザライン・エクスプレス、インビザライン・ライト、インビザライン・GO、インビザライン・GOプラス、インビザライン(コンプリヘンシブ)等のパッケージに分かれてます。

治療期間はインビザラインGO(軽度対象)で約4か月程度、様々な症例に対応可能なインビザライン(コンプリヘンシブ)で約1年半~2年程度となっています。

治療期間が短いほど交換するクリアライナーの数は少なく、逆に長いと多くなります。



2.システムおよびサービス(Imaging Systems and CAD/CAM Services "Systems and Services")

口腔内スキャナーの「iTero」シリーズ、CAD/CAMソフトウェアの exocad 等を含むカテゴリーです。

口腔内スキャナーの「iTero」シリーズ(iTero Element 2、iTero Element 5D Imaging Systemなど)は、2011年に買収したイスラエルのcadnet社のブランドで、これまで68,000台が販売されています。


iTeroスキャナーは有害な放射線を出すことなく、数分で口腔内の3Dデータを作成することができます。

以前はシリコン素材を使った型取りを行い、取った型をもとにマウスピースを作成していましたが、デジタルスキャナーを使えば、型取りが不要となるばかりか、取得したデータを製造拠点へ転送するだけで、迅速にマウスピースを製作することが可能となっています。

アライン・テクノロジーによると、インビザライン作成用データの84%はデジタルスキャナー経由にて提出されたデータとのことで、利用価値の高い製品であることが分かります。


次に、CAD/CAM サービス( exocad CAD/CAMソフトウェアプラットフォームなど)です。

このサービスは、デジタルスキャナーで取得したデータをもとに、補綴物(人工歯)作成を支援するソフトウェアサービスです。

これまで、主にアナログ、手作業で行っていた歯科医と歯科技工所間のワークフローを強力にデジタル化・効率化することが可能となります。

これまで47,000を超えるソフトウエアライセンスが販売されています。


これまでのアナログなワークフローからデジタルなワークフローへ変わることで、患者ニーズに迅速に柔軟に対応できるため、今後のポテンシャルは非常に高いと思われます。

例えば、簡単な人工歯(インレー、クラウン等)については、口腔内スキャナーで計測・CAD/CAMソフトウエアで設計・シュミレーション、3Dプリンタにより数十分で完成という流れです。

CAD/CAMサービスを使うことで、これまで何日もかかっていた人工歯製作にかかる日数が大幅に短縮され、患者の通院回数も減る訳ですから患者側のメリットも大きいのではないでしょうか。


次にビジネスリスクです。

■ビジネスリスク

アライン・テクノロジーの売上高の大部分は、歯科矯正のインビザライン、口腔内スキャナーのiTeroに依存しています。

近年、マウスピース矯正市場は競争が激化しており、競合となる格安マウスピース矯正メーカー(SmileDirectClub、byte、Candid Co、Smilelove 、SnapCorrectなど)により成長が脅かされています。

特に、スマイルダイレクトクラブ(※)は、歯科医院受診不要&低価格(約2000ドル、インビザラインは約5200ドル)が人気を得て売り上げを伸ばしています。

その影響もあり、インビザラインのアメリカでの売り上げは、ここのところやや鈍化傾向で推移しています。

その他、約600件程度ある米国特許がこの先、2022年~2040年にかけて段階的に期限切れを迎えるため、競争上の優位性が失われる可能性が指摘されています。

(※)アライン・テクノロジーは、2016年にSDCの株式17%を取得し、クリアライナー等の供給契約を締結するなど良好な関係が続いていましたが、2018年に一部競業避止条項違反について係争となり、現在も係争が続いています。


これらのリスクがあるものの、格安マウスピース矯正については、適用症例が軽度なものに限られる、オフィスがない、自分で型取り(印象)をする必要がある、治療実績が少ない、米国矯正歯科学会(AAO)等から懸念が表明されているなど、安いにはそれなりの理由があります。

このため、プロの歯科医のコントロールのもと、これまでさまざまな症例実績を膨大に積み上げてきたインビザラインとは別物と考えるほうが自然かもしれません。(利用者層も異なるはず。)

特許切れの懸念については、歯を適切な場所に確実に移動させる特許は今のところいずれの会社にもないわけですから、クリアライナー素材やその製造方法などの特許切れがビジネスに深刻な影響を与えるとは考え難いのではないでしょうか。


前置きがやや長くなりましたが、次に財務分析です。

◆財務分析


■売上高&売上高成長率



(出所)Align社 QUARTERLY RESULTSより筆者作成

新型コロナ・パンデミックの影響がありましたが、順調に伸びています。

直近では、口腔内スキャナーを含むシステム&サービスの伸びが顕著となっています。

■営業利益&営業利益成長率



■純利益&純利益成長率


※2020年の増加は、スイス子会社への知的財産権等の移転に伴う特殊要因によるもの

■粗利益率&営業利益率


粗利益率は非常に高いです。10-Kによるとセグメント別の粗利益率は、クリアライナーが76.2%、システム及びサービスが65.3% です。

また、セグメント別の営業利益率は、クリアライナーが40.8%、システム及びサービスが36.7%となっており、こちらも非常に魅力的です。

参考までに、米国の医療技術企業で整形外科用インプラントなどを手掛けるトップメーカーのストライカー社の粗利益率は約60%、営業利益率は約15%です。

■キャッシュフロー


フリーキャッシュフローは新型コロナの影響を受けつつも右肩上がりです。

欲を言えばもう少し安定感のある強い伸びかほしいところでしょうか。

■株数、株数


自社株はやや心もとないですね。

株価の乱高下の遠因もこの当たりにあるのかもしれません。

■配当、配当性向、配当成長率



■1株当たりフリーキャッシュフロー(FCFPS)



■R&D



■バランスシート 総資産(%)



バランスシート全体を100%としたときの、流動資産(Currnet Assets:ピンク)と固定資産(Non-Current Assets:青)の構成比です。


■バランスシート 負債及び株主資本(%)





同様にバランスシート全体を100%としたときの、負債(ピンク)と株主資本(青)の構成比です。


◆10年後予想株価

■EPS&EPS成長率(実績)

※2020年のEPSは特殊要因(繰延税金資産)を除外した値を採用しています。


2012年から2020年のEPSを指数で近似したところ、EPS成長は32.01%となりました。


■今後のEPSの推移(予想)


先ほど計算したEPS成長が今後も続くと仮定した場合の予想EPSの推移です。

計算したところ2031年の予想EPSは109.7ドルという結果になりました。


■過去のPER(実績)

過去10年の実績PERの上限、平均、下限は次のとおりです。

<PER上限> PER=150.4

<PER平均> PER=57.2

<PER下限> PER=24.3

■予想株価


予想EPSに実績PER(上限、平均、下限値)をかけて計算した予想株価帯の推移です。

2031年の予想株価は、PER上限では16495.0ドル、平均では6277.5ドル、下限で2666.7ドルとなりました。


■予想期待収益率


先ほど計算した予想株価をもとに、2021年12月末時点の株価(657.18ドル)を基準とした予想期待収益率を計算(CAGR)しています。

2031年の予想期待収益率は、PER上限では38.0%、平均では25.3%、下限で15.0%となりました。


■10年後の予想EPS、予想株価、期待収益率


予想EPS、予想株価、期待収益率のまとめです。


■株価チャート(→stockcharts.com)

現在の株価は437.06ドル(3月23日時点)で、直近高値(737.45ドル)から約4割程度下がっています。

かなり下がりましたが、まだ割安とは言えないレベルかなと思っております。

乱高下しつつも長期的には上昇トレンドを描いています。


https://schrts.co/AqAqTvbM

■過去10年株価パフォーマンス



(出所)PORTFOLIO VISUALIZER より筆者作成

ALGN、GOOGL、SPYの直近10年株価パフォーマンスを比較しています。

ALGNはYTD(-22.17%)、MaxDrawdown(-55.54%)こそ酷いですが、CAGR35.26%ですから、ぶっちぎりと言ってもいいのではないでしょうか。


◆まとめ

本記事ではアライン・テクノロジーについて会社概要、財務分析、10年後予想株価、期待収益率などを振り返りました。

クリアライナー矯正のパイオニアであり、業界のトップブランドであることは間違いありませんが、ここのところ低価格を売りにする競合他社との競争が激化しています。

その中でもスマイルダイレクトクラブは、低価格・省プロセスを売りに販売実績を伸ばし、2019年にはNASDAQにIPOまでした強力なライバルであることは間違いありません。

しかしながら、格安マウスピース矯正については、安いにはそれなりの理由がある訳で、利用者層も恐らく異なると思われますので、それほど心配する必要はないのではないかと考えております。

むしろ伸びしろのある海外マーケットをタイムリーに押さえているのかどうかのほうがポイントだと思います。

その他、クリアライナーと親和性の高い口腔デジタルスキャナーやCAD/CAMサービスなど、新たなサービスにも進出していることも忘れてはいけないでしょう。

近年、歯科業界のDXには目を見張るものがありますので、アライン・テクノロジーがこの先、どのような成長を遂げるのかとても楽しみです。

なお、株価については長期的には上昇トレンドを描いている一方、短期的には乱高下していますので、ホールドする場合はなかなか忍耐力が必要だと思います。

割安なレベルにまで下がった際には鼻をつまんで拾っておきたい銘柄ではないでしょうか。

ご一読くださりありがとうございました。

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