リセッションのシグナル|なぜ長短金利差と失業率に注目が集まるのか?

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サマリー

・長短金利差(長短金利スプレッド)と失業率は、その再現性の高さからリセッションのシグナルとして注目度がとても高い。
・いずれの指標も、現時点でシグナルがオンしたとは言えないが、過去の推移をみると、もうしばらくするとシグナルがオンしても不思議ではない状況である。


こんばんは、Yukinosuke です。

今回は、リセッション(不況)の代表的なシグナルである長短金利差と失業率について、その注目される理由と現在の状況を簡単におさらいしておきたいと思います。

◆長短金利差(長短金利スプレッド)

長短金利差は、長期米国債利回りから短期米国債利回りを引いた(差をとった)非常にシンプルな指標です。
短期米国債利回りはFRBの政策金利とほぼ同様の動きですが、長期米国債利回りは、今後のインフレ期待や経済成長など複合的な要因に基づきマーケットにより決定されます。
通常時であれば、長期債利回り >短期債利回りなので、利回り差はプラスとなっていますが、リセッションが近づくと、長期債利回り< 短期債利回りとなり、利回り差がマイナス(逆イールド)となることが知られています。
また、過去のリセッション前にはほぼ確実に逆イールドが出現していたことから、エコノミスト、政策立案者、マーケット関係者などに広く注目されています。
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■米国債10年利回りー米国債3か月利回りの推移(長期)


上図は代表的な「米国債10年利回りー米国債3カ月利回り」の推移です。
いずれも逆イールド(赤丸囲み)になってから、おおむね1年~2年以内にはリセッション入りしています。

■米国債10年利回りー米国債3か月利回りの推移(リーマンショック時)


また、リーマンショック時の場合をみると、2006年8月に初めて逆イールド(-0.21%)が出現し、その16カ月後の2007年12月にリセッション入りしています。

なお、2018年5月時現在の長短金利差は1.08%となっており、FRBの利上げペース等を考えると、逆イールドとなるまでにはまだしばらくは時間がかかりそうです。
ただ、過去のトレンドをみると、下がるときは比較的短期間で急激に下がっていますから、この傾向も覚えておきたいです。

◆失業率

米国労働省が毎月公表している失業率は、こちらも大底を打ってから1年~2年以内にリセッション入りすることが知られており、前述の長短金利差と同様に再現性が高く、マーケット関係者を始め広く注目される指標となっています。

■失業率の推移(長期)

(出所)FRED | St. Louis Fed

■失業率の推移(リーマンショック時)


こちらも、リーマンショック時をみると、2007年3月に大底の4.4%を記録し、9か月後のその年12月にリセッション入りしています。

なお、2018年5月現在の失業率は、目安の4%を下回る3.8%となっており、2000年のドットコムバブル時の大底である3.8%とすでに同じ水準となっています。

◆VTIでも確認

では、最後に上記2つのシグナルを代表的な米国株ETFの一つであるVTIの動きでも確認しておきたいと思います。

■VTI(Vanguard Total Stock Market ETF)[週足]とリセッションシグナル

(出所)StockCharts.comより作成

図中にそれぞれのシグナルがオンした時期を示しており、これだけをみても非常に優秀なシグナルであることがわかります。
特に、失業率のシグナルがオンした07年3月は、マーケットがこれに反応したようで、一時的にですが5~6%程度下落しています。ただ、その後は、再び上昇トレンドに戻っています。

◆まとめ

今回取り上げた長短金利差と失業率のいずれもリセッションのシグナルとして優秀で、その注目度は非常に高いです。

それぞれのトレンドや値を確認したころ、現時点ではまだシグナルオンとは言えませんが、もうしばらくするとシグナルがオンとなってもおかしくはないと考えられます。

特に、長短金利差と失業率が同時にシグナルがオンとなるような場合は、リセッションの足音が間違いなく近づいていると考えても問題ないと思われます。

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